マイナンバー制度の対応策
マイナンバー制度が平成28年1月から実施され税や社会保険の手続に個人番号を付けることが必要となります。そのためそれに対応するための手続について企業は準備を始める必要があります。
マイナンバー制度は「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号利用等に関する法律」として制定されるものです。
この法律でマイナンバーは、「個人番号」と言われ「住民票コードを変換して得られる番号であって、当該住民票コードが記載された住民票に係る者を識別するために指定されるものをいう。」と定義づけられています。
この制度が導入される場合民間企業の準備について
1.マイナンバー制度の利用開始はいつからか。
現在利用開始のスケジュールは
? 労働保険関係 :雇用保険 労災保険は平成28年1月から
? 社会保険関係 :健康保険 厚生年金保険 国民年金は平成29年1月から
となっています。
2.上記の「個人番号」(マイナンバー)の配布開始
今年(平成27年)10月5日(月)以降、住民票のある世帯ごとに12桁のマイナンバーを記載した「通知カード」(紙製)が簡易書留で送付されます。
「通知カード」を受けた人は申請すれば「個人番号カード」の交付を受けることが出来ます。
「個人番号カード」 : 個人番号 生年月日 性別 住所 本人の顔写真等記載のICチップ付きカード
平成28年1月より上記1.のように社会保障、税、災害対策等の役所に対する手続にマイナンバーが利用されます
法人(事業者)についても1法人(以下事業者といいます)に1つの13桁のナンバーが付されます。
3. 民間事業者は、給与支払いの際に社員の所得税を源泉徴収、住民税の特別徴収、社会保険料の支払い等個人番号が必要な場合が出てきます。そのため社員から個人番号を告知してもらう必要があり、また配偶者や扶養親族の個人番号も告知してもらう必要があります。
事業者は法人、個人を問わず、社員は正社員、パート、アルバイト等すべてを含みます
4.「セキュリティ」に注意
「マイナンバー」利用のため特定個人情報保護委員会(平成26年12月11日設定)より「特定個人情報の適正なイドライン(事業者編)」発せられました。
それによると
? 個人番号の原則的な取扱い
「個人番号は番号法が予め限定的に事務の範囲の中から、具体的な利用目的を特定した上で、利用することを原則」 としています。事業者はマイナンバー法で認められた税と社会保険の手続に使用する場合のみ 可能となります。
「個人番号」は、個人情報保護法とは異なり、本人の同意があっても、個人番号を利用できる事務の範囲内を超えて特定個人情報*1を利用してはならないと定められています。従って、利用目的を超えて利用する必要が生じた場合には、当初の利用目的と相当の関連性を有する合理的範囲内で利用目的を変更し、本人に通知等を行うことにより、変更後の利用目的の範囲内で個人番号を利用することが出来るとされています。
*1 特定個人情報:個人番号(個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のものを含む。)をその内容に含む個人情報としています。
? 例外的な取扱いが出来る場合として人の生命、身体又は財産の保護のための提供(法19条13号)
人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合において、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難なであるときは、特定個人情報を提供することが出来ます。
5.マイナンバー取得のための手続
? 「マイナンバー」を取得するには、あらかじめ利用目的(例 社会保険手続のため等)を特定し、通知または、公表する必要があります。方法としては、メール、社内イントラネット、掲示板への記載、 就業規則へ規定等があります。
? 実施者としてマイナンバー法では次のように定めています
個人番号を業務に使用する立場(行政など)を 「個人番号利用事務実施者」
個人番号関係事務を処理する者(企業など)を 「個人番号関係事務実施者」*1
*1個人番号関係事務実施者 :社会保険労務士等も含みます
? 事業者はマイナンバー取得の際本人確認を行う必要があります
マイナンバー法第16条 本人確認 本人確認については、番号法、番号法施行令、番号法施行規則、及び個人番号利用事務実施者が認める方法で対応する必要があります。
? 通知カードの提示を受ける場合
「通知カード」+「本人の身元確認書類」 運転免許書等
? ?以外の場合
「番号確認書類」+「本人の身元確認書類」 住民票の写し等 運転免許証等
? 本人の代理人から個人番号の提供を受けた場合
? 書類の提示を受ける場合等
「代理権確認書類」+「代理人身元確認書類」+「本人の番号確認書類」 代理権確認書類(代理人の戸籍謄本、委任状等)、代理人身元確認書類(個人番号カード、運転免許証等)、本人の番号確認書類(本人の個人番号カード等)
6.保管と破棄
個人番号は、番号法で限定的に明記された事務を処理するために収集または保管されたものであるから、それらの事務を行う必要がある場合に限り特定個人情報を保管しつづけることが出来ます。また、個人番号が記載された書類等については、一定期間保存が義務付けられているものがあります。
一方、それらの事務を処理する必要が無くなった場合には、個人番号をできるだけ速やかに廃棄又は削除しなければならないと定められています。
「安全管理措置」 : マイナンバー法で、個人番号関係事務実施者または個人番号利用事務実施者である事業者は、個人番号及び特定個人情報(以下「特定個人情報等」という。)の漏えい、滅失又は毀損の防止等、特定個人情報等の管理のために、必要かつ適切な安全管理措置を講じなければならない。また従業者(従業員、取締役、派遣社員等)に特定個人情報等を取り扱わせるに当たっては、特定個人情報等の安全管理措置が適正に講じられるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならい。 としています
7.委託の取扱い
個人番号の取扱いを「個人番号関係事務実施者」等を第三者に委託する場合をマイナンバー法では次のように定めています。
「委託先における安全管理措置」
「個人番号関係事務の全部又は一部の委託をするもの(以下「委託者」と言います、例えば顧問先企業)は、委託した個人番号関係事務で取り扱う個人情報の安全管理措置を適切に講じられるよう「委託を受けた者」に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない」と定められています。このため、委託者は、「委託を受けた者」において、番号法に基づき委託者自ら果たすべき安全管理措置と同等の措置が講じられるよう必要かつ適切な監督を行わなければならない。」とさだめています。
マイナンバー法が始まる前に事前に準備しなければならないこと
1.洗い出し作業
?個人番号を取り扱う事務の明確化 ?特定個人情報等の範囲の明確化
2.設置と選任
?事務取扱担当者の選任 ?責任者・責任部署の設置
3.方法の決定
?本人確認方法の決定 ?個人番号・特定個人情報の記録と保存方法の決定
?委任先の適切な選定 ?委託先との契約の締結 ?委託先の特定個人情報の取扱い状況の把握
5.規程類や書面の整備
?基本方針の策定 ?取扱い規程等の策定
6.安全管理措置の整備
?組織的 ?人的 ?物理的 ?技術的 安全管理措置の整備
7.制度の周知
?10月~12月頃 ?住民票のある人に全員 ?簡易書留便 ?家族全員のマイナンバー通知カード ?住民票の住所に届く
?無くさないように!! ?家族分も含めて会社に提出
8.個人番号の提供の要求
上記7.個人番号の取扱いの委託をうけた者は、個人番号の提供を要求します。
個人番号関係事務実施者は、個人番号関係事務を処理するために必要がある場合に限って、本人又は他の個人番号関係事務実施者に対して個人番号の提供を求めることが出来るとされています。ただし、提供を求める制限として、「何人も、番号法第19条(特定個人情報の提供の制限)各号のいずれかに該当し特定個人情報の提供を受けることが出来る場合を除き、他人の個人番号の提供を求めてはならない。」とされています。
10月以降実際の収集
?簡易書留は不在者には持ち帰ります。確実に受け取ること ?住まいの場所と住民票の住所が異なる場合は、通知カードを確実に受け取ることが出来ない可能性あり ?絶対無くさないこと
以上マイナンバー制度についての対応策を記述しました。制度導入に関し、社内規定の見直し、安全管理措置の実施、従業員に対する説明等ご要望があれば是非幣事務所までご連絡ください。
投稿者 otuji : 2015年8月28日
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無期労働契約転換制度について
平成24年改正労働者派遣法成立時の付帯決議【附帯決議】(24.3.27厚生労働委員会議決)
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
「労働契約申込みみなし制度の創設に当たり、派遣労働者の就業機会が縮小することのないよう、周知と
意見聴取を徹底するよう努めること。」
上記改正法は平成27年10月1日から施行することとされ、同法第40条の6で「労働契約申し込み
みなし制度」について定めています。この制度について平成27年7月10日に職業安定局長から通達が発
せられました。以下その概略を説明します。
1.制度の趣旨
善意無過失の場合を除き、労働者派遣を受ける者が派遣労働者に対して、労働契約の申込みをしたものと
みなす制度です。「善意無過失の場合を除き、違法派遣をうけいれた者にも責任があり、そのような者に民
事的な制裁を科すことにより、派遣法の実効性を確保する。」為としています。
2.違法行為の類型
? 派遣労働者を禁止業務に従事させること
? 無許可事業主又は無届出事業主から労働者派遣の役務の提供を受けること
? 期間制限に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること
? 労働者派遣法又は労働者派遣法の規定により適用される労働基準法等(以下「労働者派遣法等」という。)
の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、必要とされる事項を定め
ずに労働者派遣の役務の提供をうけること(以下「いわゆる偽装請負等」という。)
3.違法行為の「いわゆる偽装請負等」
派遣労働者を禁止業務に従事させること、無許可事業主又は無届出事業主から労働者派遣の役務の提供を受けること及び期間制限に違反して労働者派遣の役務の提供をうけることという他の3つ類型と異なり、労働者派遣法等の適用を免れる目的(以下「偽装請負等の目的」という。)で、請負契約等を締結し、当該請負事業主が雇用する労働者に労働者派遣と同様に指揮命令を行うこと等によって、偽装請負の状態となった時点で労働契約の申込みをしたものとみなされるものをいいます。
派遣先等に「偽装請負等の目的」が無く、その後受けている役務の提供がいわゆる偽装請負等に該当するとの認識が派遣先等に生じた場合は、その認識した時点が開始時点より後であればその日の翌就業日以降初めて指揮命令を行う等により改めて「偽装請負等の状態となった」と認められ、この時点で労働契約の申込みをしたものとみなされます。
4.労働契約の成立の時点
? 労働契約が成立する時点 見做し制度に基づく申込みについて、派遣労働者が承諾の意思表示をした時点
となります。
? 派遣労働者が承諾できる申込み 最初の申込みに限りません。
? 承諾をしないことの意思表示 見做し制度は派遣先等に対する制裁であることから、違法行為の前から予め派遣労働者が「承諾をしない」ことを意思表示した場合であっても、その意思表示の合意については公序良俗に反し、無効と解釈されます。
以下省略
以上労働契約みなし制度について解説しました。なお、改正法施行日時点で違法行為が行われている場合、
経過措置が設けられていないため、適用される違法行為が行われている場合は、派遣先等は、その時点で労働契約の申込みをしたものとみなされますので注意してください。
投稿者 otuji : 2015年8月28日
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